クラブ選び=シャフト選びに悩んだとき、考えたいこと

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多くの女性ゴルファーの皆さんは、まず大手ゴルフショップなどで販売されているレディースクラブから使い始め、ある程度ステップアップしていく中で、そのクラブに物足りなくなり、より上級者向けのクラブを探します。しかし、レディースクラブの中で自分が望むクラブを見つけるのは難しく、結局、レベルをあげたい=メンズクラブを選択するしかない、というのが現状でしょう。メンズはどうしてもシャフトが長くて硬い、それを女性向けにチューニングすると、短くせざるを得ません。短くなると、シャフトの硬さやしなり方が変わり、クラブ自体、ますます扱いにくくなっていきます。自分にはどんなクラブが合っているのだろう、どういうクラブを使えばいいのだろう、とお悩みの女性ゴルファーの皆さんに、きちんと対応できるシャフトとは一体どうあるべきか?当社のシャフト設計に参加していただいている赤塚恒夫氏(株式会社トライファス 代表取締役)にお話を伺いました。

硬さとキックポイントのバランス

シャフトのキックポイント最も大きくしなる位置には3種類あります。tip(先端)がやわらかくてbutt(手元)が硬く、先と手元の硬さの勾配硬さの違いによる斜度が一番大きいのがローキック(Low=先調子)。先の硬さと手元の硬さがあまり変わらない、硬さの勾配が一番ゆるくて変化が少ないのがハイキック(High=元調子)。その中間がミドルキック(Middle=中調子)です。
通常、シャフトはtipとbuttの硬さの比率で勾配をコントロールします。そうすると、実はフレックス値シャフトのやわらかさを表した数値も変わってしまうという問題点があります。極端にtipとbuttの硬さの比率を変えようとすると、Low(L)、Middle(M)、High(H)でフレックス値が変わり、硬さも変わる。そうなると全体のバランスが崩れます。硬さに違いを出すことなく、キックポイントに変化をつけるには、tipとbuttだけじゃなく、centerも考えます。centerでポイントを作って、centerからbuttにかけての硬さの勾配で、キックポイントL、M、Hを分けるのです。centerとbuttだけで変えるので、硬さは極端に変化しません。centerからtipにかけては、ほぼ同じような勾配をとるので、centerがやや硬めで、tipがやわらかめになります。
また、centerからtipだけを見ると、かなりテーパード次第に細くなっていく率が大きくなり、先だけ見るとキックポイントはすべてLということになります。

フィーリングとボールのつかまり

アマチュアの女性ゴルファーにとっては、やはりボールはつかまりやすい方がいいでしょうし、男性に比べパワーが小さい女性は、シャフトがしっかり返ってくる、ヘッドがスッと戻ってくるクラブを使うことで、コントロール効果が高くなると考えます。
キックポイントがHの場合、一般的にボールはつかまりにくいと言われています。全体をHにすると、やわらかく振り抜けて、気持ちのよいスイングができると思いますが、ヘッドはスッと返ってくれないのでタイミングが難しい、という印象をもたれる方が多いと思います。
結論から述べますと、女性用シャフトにとって必要なのは、centerからbuttで、フィーリング、心地いい打感を感じていただく。そして、tip、すなわちヘッドの返りでボールをつかまえる、という設計です。フィーリングとヘッドの返りを、ある意味、別の設定にするのです。
通常のL、M、Hでも、フィーリングにはそれぞれ特徴がありますが、女性用シャフトの機能として、「つかまり」ということに最大限の考慮をする必要があると考えます。ボールをつかまえるために、多くの方がローキックのシャフトを試されます。しかし、一般的なローキックのシャフトではbuttが硬すぎて、ボールがつかまるようにはなるけれど、今度はタイミングが合わなくなっていきます。タイミングが合わなくなると、スライスしがちになっていくことにつながります。
ボールがつかまる、つかまらない、という観点でローキックという定説は、あくまで、きちっと打てる方という条件付きでしょう。手元が硬いシャフトはタイミングが非常に早くなるので、自分が思ったよりヘッドが先にいってしまうという問題点が出てきて、思うようにはボールをつかまえてくれません。そうすると、だんだんフレックス値を落としてやわらかくしていくことになります。しかし、やわらかくしていくと、今度はtipが硬くなってきて、逆にヘッドの返りが悪くなります。
ゆえに、シャフトのcenterからtipはボールのつかまりを考え、centerからbuttでフィーリング、スイングのタイミングを合わせる、という2つに分けた考え方が必要なのです。

"しなり"を感じてほしい

このように、シャフトの支点の取り方を考えることで、centerが起点となって、tipの特性は変えずに、手元側の剛性曲げやねじりの力に対する、変形のしづらさの度合いのこと。力に対して変形が小さい時は剛性が高い(大きい)という、しなりのフィーリングを変えることを提言しました。恐らく、centerで数値を計れば、どれもほとんど同じシャフトになっています。

赤塚氏

だから、フレックス値もそれほど変わらず、そこのフィーリングも変わりません。
しかし、実際に振ってみると、手元側の違いにより、それぞれの特性をよく感じてもらえるクラブになります。
シャフトの硬さ、そのtipとbuttの違いは、硬さよりもしなり具合の違いの方が大きく出ます。女性用シャフトは、特にそれを明確にすることが必要です。
女性ゴルファーの最大の特徴は、基本的にはパワーがないことと言えるでしょう。パワーで振るよりも、タイミングで軽く振って、しっかりボールをつかまえ、しっかり飛ばせる、ことを重要視する必要があるのです。

軽ければいい、わけではない

女性のクラブは軽ければいい、と考えている方が多いようです。女性ご本人も、周囲の男性の方も。しかしながら、軽いということは、シャフトの厚みが薄く、フレックス値、すなわち硬さは同じなのに重量だけ軽いので、弾性率が高くなっていく。弾性率が高くなるということは、バネが強くなり、ピンピン跳ねる感じで、タイミングも早くなりすぎ、合わせるのが難しくなると言えるのです。ゆっくり振りたいのに、シャフトそのものは早く振るシャフトになってしまっていれば、当然ながら、振り遅れる感が出てきます。
超軽量で硬いシャフトを作ったとしたら、すごくバネが強いので、切り返しからのダウンスイングが、ヘッドスピードが相当速くないと間に合わず、振り遅れてタイミングが合わない、ということになります。バネが強く、反応しきれないと、クラブの挙動に怖ささえ感じてしまうはずです。それをスイングで調整してスッと戻せる方ならボールはつかまりますが、そうでなければ、動きのシビアなシャフト、ということにしかならず、使いづらい印象をもたれるでしょう。
しなり感を出すのには、ある程度の重量も必要なのです。重量感、質量感は、手元に残るので、重さを生かして、感じて振ることが大切です。

女性シャフトにもバリエーションを

女性でもヘッドスピードが速い方はいらっしゃいます。遅い方は20m/sぐらいですが、速い方は40m/sと、非常に幅が広いと言えます。遅いスイングの方、速いスイングの方それぞれに、硬さと重量のバランス、キックポイントをどこに置くか、スイングのフィーリングなどで、幅広いバリエーションを用意する必要があるでしょう。
Saiprogolfの女性専用シャフト、CP54の重量は54gですが、これを将来的には、例えば、L、M、Hに対して重量差をつけることで、さらに対応の幅を広げていくことが望ましいと考えます。
現実として、女性用シャフトはまだまだスタート地点に立ったばかりです。しかし、女性ゴルファーの皆さんも、自分のスイング特性、パワー、身体特性などに合わせ、ご自分に合ったシャフトのゴルフクラブをお選びになるべきです。
最適なクラブ選びにより、スイングも、飛距離も、スコアも、大きく変わることを、ぜひ体感してみてください。

Saiprogolfは今後も、赤塚氏を始めとした技術者の皆さんとともに、より優れた女性用シャフトの研究開発を続けてまいります。
そして、より多くの女性ゴルファーの皆さんのご期待に、お応えしていきたいと考えています。

PROFILE
赤塚恒夫(あかつかつねお)
1952年3月3日愛知県生まれ
神奈川大学工学応用学科卒。EI分布によるシャフト分析を提唱、リシャフトブームの先駆けとして、36年間ゴルフシャフト一筋のエンジニア。株式会社柳田産業を経て、2011年5月にゴルフシャフトメーカー・株式会社トライファスを立ち上げる。